元刑務所長の講演「人を育てる」。一人の人に向き合う気持ちに、胸を打たれました
ブログ2026年10月18日
こんにちは。原田洋平です。
本日10月18日(日)、周南市学び・交流プラザで開かれた教育講演会「人を育てる〜我が矯正人生〜」を聞いてきました。
講師は、元刑務官で、第42代横浜刑務所長を務められた亀井史巠(かめい・ふみひろ)さん。市の情報紙で案内されていた、どなたでも参加できる講演会です。私の見たところ200名ほどの方が来られていて、私は一番前の席で聞きました。
亀井さんは、38年間にわたって刑務官として多くの受刑者の立ち直りに携わってこられた方で、月刊誌『致知』2026年5月号にも「我が矯正人生」と題したエッセイを寄せておられます。亀井さんご自身も『致知』の愛読者で、出合えたことへの感謝をつづった手紙に、現役時代の出来事を書き留めた小冊子を添えて送られたそうです。それを読んだ致知出版社の社長が感銘を受け、取材と掲載につながったと、同社の取材手記にありました。
私自身も『致知』を拝読しています。一人の読者の手紙から誌面へ、そして周南での講演へ。そのご縁のつながりにも心を動かされましたし、誌面に登場された方のお話を直接うかがえる、貴重な時間になりました。
御年85歳で終始立って講演会をされたこと、今起きてるかのごとく涙される感情の豊かさに心打たれました。

父と母から教わったこと
亀井さんは子どもの頃、お父さまからこう教えられたそうです。
「人間は皆、それぞれの分野で果たすべき責任(使命)を背負ってこの世に生まれている」
(『致知』2026年5月号より)
自分の使命は何か。これまで与えられて育ってきた私が、今度は何を返していけるのか。あらためて考えさせられました。以前、子どもたちや地域のために使える時間が、私の活動の喜びであり原動力だと書いたことがあります。それが、私なりの使命につながっているのかもしれません。
取材手記によると、亀井さんのご両親は、お二人とも体にハンディを抱えながら、子どもたちに人としての正しい生き方を教えられたそうです。講演で伺ったお母さまの教えは、とても具体的でした。朝のあいさつをする。呼ばれたら「はい」と返事をする。脱いだ履物をそろえる。そして、食事の「いただきます」「ごちそうさま」の意味をかみしめる。
「いただきます」には、ほかの命をいただいているという感謝が込められている。「ごちそうさま」は、食事のために走り回って用意してくれた人への感謝。そんなふうに話されました。配布資料にも、幼い時期の教育は「躾(しつけ)」に尽きる、とありました。
私の座右の銘は「凡事徹底」です。あたりまえのことを、あたりまえに、徹底して続ける。お母さまが教えた4つの習慣は、まさにそれだなと感じました。毎日の小さな習慣こそが人をつくるのだと、背筋が伸びる思いでした。
困っている人を助けるのが先
もう一つ心に残ったのは、原爆が落とされて数日後のお話です。
やけどを負った若いお母さんたちが、小さな子どもを連れて、食べ物や水を求めて逃げてこられたそうです。亀井さんのお母さまは、亀井さんと二人で開墾した畑のトウモロコシを茹でてふるまい、水を持たせて送り出しました。楽しみにしていたトウモロコシを分けることに、思わず不満を口にした亀井さんは、困っている人を助けるのが先だと、強く叱られたといいます。
そのお母さまの後ろ姿に、光が差して見えた。そんなお話でした。
どんな人でも見捨てない。のちに矯正の現場で貫かれたその姿勢は、この日のお母さまから受け継がれたものなのかもしれないと思いました。

その方に向き合う気持ち
講演の中心は、亀井さんが刑務官として出会った死刑囚、Sさんのお話でした。
重い罪で死刑判決を受けたSさんは、手がつけられないほど荒れていたそうです。それでも亀井さんは、毅然とした態度を崩さず、ときに厳しく、ときに父親のように、Sさんと向き合い続けました。やがてSさんは心を開き、人としての生き方を少しずつ学んでいったそうです。
配布資料には、亀井さんが仕事の中心に据えてきた「武士道精神」として、惻隠の情、誠実、正直、勇気、卑怯を憎む、という言葉が並んでいました。惻隠の情は、人の苦しみや悲しみを見過ごせない心のこと。あのお母さまの姿と、重なって見えました。
Sさんの罪によって、命や暮らしを奪われた方々がいます。そのことは決して忘れてはいけないと思います。
私が胸を打たれたのは、Sさんが変わったという結末よりも、その過程でした。罪を犯した人の立ち直りに関わる、矯正というお仕事の素晴らしさ。そして、Sさんという一人の方から逃げずに向き合い続けた、亀井さんの気持ちです。
私も会社を経営する立場として、人を育てることの難しさを感じることがあります。厳しさとやさしさの両方を、一人の相手に向け続けることは、簡単ではありません。
正直に言うと、私はなかなかそうはなれません。それでも、己を持って人に接していく。そのことが大切だなと感じました。
こちらが心を開かないと相手も心を聞かない。
「つ」の付く年齢までに
人としての土台は、幼いうちにつくられる。亀井さんは、「つ」の付く年齢のうちに、あいさつや返事を家庭で身につけることが大切だと話されました。知識に偏るのではなく、人間力を育てること。家庭でのあいさつのような積み重ねが、結果として犯罪を防ぐことにもつながる、というお話でした。スマートフォンに子どもを預けっぱなしにすることへの心配も、口にされていました。
私自身、小学1年生のときの担任の先生への恩が、PTAに関わってきた理由の一つです。子どもの頃に出会った大人のことは、50歳になった今も心に残っています。
一方で、忙しい毎日の中では、思うようにいかない日もあります。だからこそ、家庭だけに背負わせず、地域の大人みんなで子どもに声をかけていけたらと思います。
周南市にも、子育ての悩みや不安を抱えたまま孤立しがちな家庭を支えるため、地域で相談にのる「家庭教育支援チーム」が市内に8つあります。11月7日からは、市の子育てセミナー「今からでも間に合う!小・中学生のこどもを持つ親のためのコミュニケーション術」(全4回・無料、徳山保健センター、申し込みは10月30日まで)も開かれます。
そして亀井さんのお話は、どんな人でも立ち直れる、ということも教えてくれました。幼いうちの関わりを大切にすることと、人は何歳からでも変われると信じること。その両方を大切にしたいと思います。
さいごに

配布資料には、亀井さんが大切にしている生活の型も紹介されていました。朝は希望をもって起き、昼は努力して生き、夜は感謝して休む。
今夜は、この時間をいただけたことに感謝して休みたいと思います。亀井さん、そして講演会を開いてくださった皆さま、本当にありがとうございました。
子どもの頃に教わったことでも、大人になってから身についたことでも構いません。みなさんが大切にしている「あたりまえ」は何ですか。よかったらコメントで教えてください。
出典(いずれも 2026-10-18 に確認)
- 周南市学び・交流プラザ 学び情報紙「ふぁいんど」10月号(教育講演会の案内) https://www.city.shunan.lg.jp/uploaded/attachment/123876.pdf
- 致知出版社 月刊誌『致知』2026年5月号 亀井史巠「体験的教育論『我が矯正人生』——Sとの出会いが教えてくれたこと」 https://www.chichi.co.jp/info/chichi/pickup_article/2026/202605_kamei/
- 致知出版社 WEB chichi「【取材手記】どんな犯罪者でも必ず立ち直れる ──元刑務官が語る感動の体験的教育論」 https://www.chichi.co.jp/web/20260412_kamei_report/
- 周南市「家庭教育支援チーム」 https://www.city.shunan.lg.jp/site/kodomosien/46672.html
- 周南市「第3期周南市教育大綱」 https://www.city.shunan.lg.jp/uploaded/attachment/109531.pdf
- 周南市「今からでも間に合う!小・中学生のこどもを持つ親のためのコミュニケーション術」 https://www.city.shunan.lg.jp/site/kodomosien/150627.html
- 講演の内容:当日の講演と配布資料(講師配布)

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